2004年01月27日 (火)
臭いものフェチ
「臭いものに蓋をする」
辞書を見ると、「醜いこと、嫌なことが外にもれないように、一時しのぎの方法で隠すこと」とあり、あまり褒められた行為ではないようだけれど、やっぱり臭いものを見たら、鼻を抓みたいし、出来れば蓋でもかぶせてお近づきにはなりたくない。
臭い匂いが堪らなく好きだというのは、よっぽどの変わり者だと思う。
しかし、困ったことにその変わり者がここにいるのだ。
ラフカイである。
犬の嗅覚は人間の数万倍、と言われているけれど、どうしてどうして確かに嗅覚のセンサーは優れているかもしれないが、快不快の好みに関してはかなり疑わしい。
ちょっと腐りかけて臭いを発し始めた肉、魚が好きなのは良しとしても、どこかで肥やしや動物のウンコを体に擦り付けてくるのだけは勘弁して欲しい。
ある日のこと。
仕事の出掛けに、庭先で遊んでいるはずのラフカイを呼んだ。家の中で留守番をしてもらうためだ。普段なら、呼ばれてすぐに飛んでくるはずがしばらく音沙汰がない。はて?と不思議に思っていると、ようやくラフカイが走って来た。ところが、である。
私の数メートル手前まで来ると、立ち止まって、こちらをジッと眺めているのだ。顔をのぞき込むと、目つきが泳いでいる。なんだか怪しい!と思うと同時に、ウンコのような臭いがぷ〜んと鼻についた。見ると、ラフカイの首から背中の辺りの毛が黒っぽく、ねっとりと湿っている。
「ぎゃーっ、やられた〜」
いったい何をくっつけてきたのだろう。
ああ、これからラフカイの体を洗って、拭いてやって、それから出掛けなくてはならない。
とてもじゃないが、こんな汚いまま家の中には入れられない。
しかし、勘が鋭いラフカイは私の目に怒りの光を見つけたのか、このまま大嫌いなお風呂に入れられると思ったのか、頭を垂れて、そそくさと逃げ出してしまった。
「ラフカイ、来なさい!」
小屋の裏を抜けて、隣のおばさんの畑に逃げ込むラフカイを追った。
私が近づこうとするとラフカイが逃げる、の繰り返し。立ち止まると、私の腰丈くらいの雑草の隙間から、涙目のラフカイが私の様子を伺っている。
「まったく、この忙しい時に限って」
大声で叫ぶ私は、ヒステリー爆発女のようになってきた。
しかし、こんなことをしていても埒があかない。私はほんの少し冷静に戻り、いったん退却して頭を冷やすことにした。
作戦変更だ。
「ラフカ〜イ、お散歩行くよ〜」
散歩用の青い綱を握り、なるべく優しそうに、普段と変わらぬ調子で呼んでみることにした。こうして何度か呼ぶうちに、ラフカイは私の思惑通りソロソロと戻ってきた。
当然ながら、そのままお縄頂戴である。
「ラフカイの馬鹿め〜、引っかかったな」
敢えなく捕まってしまった本人はすっかりしょぼくれている。当たり前だ、反省しなさい。
外の水道のホースでジャブジャブと体を洗った。
しかし、シャンプーで2度洗いしても、微かなウンコの香りは抜けなかった。
いったいどうして、犬はこうも臭いものを体に付けたがるのか不思議だ。
臭くなっても良いが、せめて後始末くらい自分でしなさいよ、ラフカイ。