2004年02月28日 (土)

野生の血 *番外編

 ラフカイはかっこいい。いや、メスだから、この場合はなんと言えばいいのだろうか。ラフカイは凛々しい、としておこう。きりっとした表情は、オオカミの血が混ざっていることが関係しているのだろう。
 犬が苦手な人だったら、ラフカイが走り寄ってくると、噛まれないか心配になるようだ。それでも、ハスキーのようなコワモテの顔つきではなく、よく見るとラフカイは“のほほん”としている。

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 人に甘えるときは目をうるませ、日向ぼっこをしているときは気持ちよさそうにまぶたを閉じている。ラフカイの表情をじっと見つめていると、意外にいろんな感情が見えてくる。
 ラフカイがおいしいものを食べているときに、田中さんはときどきラフカイにちょっかいを出す。
「ラフカイいいな〜。それちょうだい。食べちゃおうかな〜」
 するとラフカイは、ウウーッと低いうなり声を上げて、田中さんを“威嚇”する。その声だけ聞いていると、今にも噛みつかれそうで恐ろしくなってくるが、よく見ると尻尾は振っていたりするのだ。田中さんとラフカイの間で、暗黙の了解で遊んでいるのだろう。
 このほかに、「ラフカイ、じゃあね、バイバイ」と田中さんが言うと、ラフカイは「ウウォウォーン」と空に向かって遠吠えする。ラフカイに留守番をさせるときに言っていたのが、そのまま二人(一人と一匹)の“遊び”になっている。
 うなり声や遠吠えを聞くたびに、ラフカイはカナダの極北からやって来たことを感じさせる。普段はおとなしくて利口なラフカイが、ほんの少し野生を見せるときである。
 先日、カナダのフィッシュキャンプで作ったという「ドライフィッシュ」をゴッチがお土産に持ってきた。田中さんと千恵さんにとって「懐かしい味」のようだ。身をちぎって食べたあとに、ラフカイに残りの皮をあげた。そしてまたいつものように田中さんがちょっかいを出す。
「ラフカイいいな〜。それちょうだい。食べちゃおうかな〜」
 ところが今回は、ラフカイの反応が違った。かなりの勢いでうなり声を上げて、心なしか目が血走っている。故郷の味を噛み締めながら、野生の血がよみがえったのだろうか。うかつに手を出したらがぶっと噛まれそうだ。

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 いつもはのほほんと人に甘えてくるラフカイだが、ときおり見せる野生の表情にびくっとさせられることがある。そのギャップがまた、ラフカイの魅力でもあるのだ。

写真・文 ルポライター&カメラマン 新井由己

↑Top | 文:田中勝之