2004年03月03日 (水)

ラフカイ・マジック

 ラフカイには、他の犬はなかなか真似の出来ない必殺技がある。
世の中には、子供の頃痛い目にあったせいで犬恐怖症、犬嫌い、という方がけっこういるものだ。
 私の友人にもいる。
「犬が怖いの〜」という彼女のアパートにラフカイを連れていったら、なぜかラフカイはちゃっかり家の中に上がり込み、挙げ句友人と並んでソファに腰を下ろしていた。
「あれ〜、なんでだろう?私犬はダメなのに、ラフカイだと平気」
友人はラフカイに寄り添い、背中の毛を撫でているのだ。
確かに彼女の気持ちも良く分かる。ラフカイは「犬」という気がしないのである。
 私の母曰く、「ラフカイには人格ならぬ犬格がある」らしい。
 先日もこんなことがあった。
友人企画のスノーシューのイベントにラフカイを連れて参加したのだ。参加者の中には、ななちゃんという5歳の女の子がいた。ラフカイが走り寄ると、ななちゃんはお母さんの側に寄り添い、手をギュッと握りしめて、口をへの字にした。
「ラフカイはね、おとなしいから怖くないよ。仲良くしてね〜」
私がそう声を掛けると、お母さんが説明してくれた。
「ななは動物がダメなんですよね。ウサギすら怖いみたいで」
そうかあ、ななちゃんの動物嫌い直るといいな、ひとり心の中でそう思った。
 ところが、スノーシューを履いて唐松の林を一回り、みんなで散策したあと、その奇跡が起こったのだ。
「私もラフカイのヒモ持ちたい!」
いきなり、ななちゃんが声高らかに宣言した。
ラフカイのリーシュを受け取ったななちゃんは意気揚々とラフカイを連れて行ってしまった。
「奇跡だわ。あのななが犬と歩いてるなんて。これは証拠写真を撮っておかないと」
ななちゃんのお母さんはすっかりギョーテンしている。
私は何だか嬉しくて仕方なかった。ラフカイ、またやってくれたなあ。
 犬嫌いすらも「ラフカイ好き」にさせてしまうこの技を、私たちは密かに「ラフカイ・マジック」と呼ぶ。
 イベント後、ななちゃんのお母さんとメールのやり取りをしていたら、こんなメッセージが入っていた。
『昨日、ななとペットショップの前を通りかかった時
ガラス越しに子犬を見て喜んでいるななにお店の人が
「抱っこしてみる?」と言ってくれましたが
速攻で首を横に振ってました・・・。
ラフカイってすごい。』
 ラフカイを「犬好き促進委員会」なぞの委員長にでもすれば、世の中に動物好きが増えて、心優しい社会が出来上がるかもしれない。

nana_rahkai.jpg
 動物嫌いのはずのななちゃんと魔法使いラフカイ

↑Top | 文:菊地千恵