2006年03月24日 (金)

驚愕ウルフィー

今日の午後の出来事だった。突然、信じられない光景が眼に飛び込んできた・・・ ウルフィーが青空に浮かんでいたのだ。

いつも散歩に行く裏山に、ラフカイとウルフィーとテクテク登った。片道30分ほどの急傾斜の尾根をゆくと、小高い山のてっぺんに付く。そこから少し斜面を西に下ると、隠れたところに梅林がある。ちょうど梅が満開で、ここ数日ぼくたちは真っ白な梅の花に包まれたこの一帯に行くのが日課になっていた。

近づくと、甘い梅の薫りが辺りに充満する。梅林に到着して、昨秋の落ち葉がこんもり積もった地面に腰をおろして、ゆったりと眼前の梅と遠い山々の稜線の風景を眺める。すかさずウルフィーは手頃な長さの折れた枝をくわえて、眼をキラキラさせながらぼくの前にやってきて尻尾をブンブンと振り回す。棒を投げてくれと催促しているのだ。その枝をポイとぼくの太ももの上に載せると、四肢を踏ん張って臨戦態勢に入る。そして、ぼくは枝をはるか遠くに放り投げる。ウルフィーは、弾丸のように下り斜面を飛んでいく。何度投げても疲れも見せず、拾っては持ってきて太ももにポイ、また投げては取って来てポイ! ウルフィーの目の輝きは、たとえ百回これを繰り返しても変わらない。

しかし、何度目だったか、投げた棒が梅の木の枝に引っかかってしまった。普通の犬なら、いつまでも地面を探し回って見つからなければ諦めるのだろうが、ウルフィーの棒への執着は尋常ではないから、たとえ一晩かかっても、投げた棒を捜索し続けるだろう。見つからなくて家に戻った日もあったが、そんなときは翌日同じ場所へ行くと、ちゃんと前日のことを覚えていて、どこからともなく同じ棒を見つけ出してきたこともよくあった。そんな強烈な執着心は、地面の捜索にとどまらず、そのうち樹上までをも探し始める。ウルフィーは、ちゃんと3次元を理解している犬なのだ。

そうして棒が引っかかっているらしき木を見つけ、前足を幹にかけて立ち上がり、樹上の捜索を開始した。立ち上がっては地面に降り、再び立ち上がっては風の匂いで棒のありかをさぐったりして、なんとか目標物を捉えようとしていた。その姿だけでもコミカルで、ぼくたちは声を立てて笑って見ていたのだけれど、突然、この世の出来事とは思えない光景が眼に飛び込んできた。

パッと大地を蹴ったウルフィーが宙に舞い、次の瞬間、その身体は梅の木の上にあった。そして枝をうまく伝って、樹上のウルフィーになっていたのだ。
「ウルフィーが木に登ったぁ〜!」
千恵が叫んだ。
すかさずウルフィーは、さらにもうひとつジャンプし、棒が引っかかっているらしき枝に飛びついた・・・と思ったら、後ろ足が宙に浮いた。前足2本で梅の木に懸垂???
「ガンバレ! ウルフィー! いいぞぉ〜!!!」
3秒ほどぶら下がっていたウルフィーは、耐えきれずドサリと地面に落下したのだった。

千恵とぼくは、青空を背景に梅林の宙に舞ったウルフィーのその姿に驚嘆の声を上げ、そして腹をよじって大爆笑した。また一歩、ウルフィーが進化した春の散歩のひととき。もう犬とは呼べないかもしれない。

↑Top | 文:田中勝之