2004年02月04日 (水)

作ってみたいなバイオ燃料

 先週末、友人のルポライター新井さんが遊びに来た。日本でも有数の豪雪地帯である新潟は松之山から、愛車の軽トラを走らせて来たのだ。そう言えば、うちを初めて訪れたときは、新聞屋仕様のスーパーカブに乗ってきたのだから、やっぱり新井さんはちょっと変わってる。彼は「おでん研究家」でもあり、日本全国をスーパーカブで回り、おでんを食べ歩き、おでんに関する著書をもうすでに数冊出している。名実ともに「日本一おでんに詳しい男」に間違いない。
 実は、何を隠そう(別に隠す必要はないんだけど)私は新井さんの文章のファンである。昨年の春、たまたま新井さんの「遊民社通信」というホームページを発見し、あまりの面白さにすっかりはまり、挙げ句の果てにメールでファンレターを送った。ずうずうしい。でも、結局はそれがきっかけで、こうして新井さんとお付き合いできているだから、縁は不思議だな。
 
 その新井さんが「最近一番力を入れて書いた記事なんですよ」と言って、1冊の雑誌を鞄から取り出した。今回はいったいどんなテーマなのだろうと興味津々でページを捲ると、白黒4ページの文章のトップには「バイオ燃料でディーゼル革命を起こせ」とデカデカとした見出しが踊っている。
 「バイオ燃料」の文字から、「オレンジ油」「サトウキビ」一時期話題になった「ガイアックス」などという言葉がぼんやり頭に浮かんでくるけれど、それらとは関係あるだろうか。なにせ科学には滅法弱いので、難しい科学記号や公式などが出てきたら、アウトである。少し弱気になりつつ、活字を追うと見出しはこう続いている。
「天ぷら油などの廃油が『バイオディーゼル燃料』になることは数年前から知っていたが、それが家庭の台所で、しかも高品質な燃料として手作りできると聞き、ビックリ!」
 むむむむむ。「台所で手作り」という言葉が魔法のように効き、文章を一気に読み進めた。思わず口から出るのは「何〜っ」「すご〜い」「作ってみたい!」。興奮しながら、ひとり馬鹿みたいに騒ぎまくる。
だってスゴイのだ。台所で料理を作る延長のようにして、車を動かす燃料を作ってしまうなんて、想像しただけでもワクワクしてしまう。
 その必要となる原材料とは、動物性または植物性の油、これはもちろん新しくても良いけれど、廃油で充分らしい。つまり、ファミレスでもトンカツ屋でも弁当屋でも大量に油を消費するところから調達してくれば、ただで済む上に、廃棄処分行きとなる運命の油を利用再生できることになる。
材料にはこれにメタノール、苛性ソーダが加わる。
 しかし、この材料の組み合わせにはどうも身に覚えがある。
「新井さん、油と苛性ソーダを使うって、石鹸作りとそっくりですね」
石鹸はこのふたつに水が加わるだけなのだ。
私の素朴な疑問に、新井先生は丁寧に答えてくれる。
「そうなんですよね。だから、失敗すると全部石鹸になっちゃうんです(笑)。上手くいってバイオ燃料が出来ると、不純物が残るんですけど、これは洗剤として使えるんですよ」
ほお、なるほど。しかし、メタノールがどんな物質なのかはよく分からないし、どういう科学反応によって、ディーゼルに替わる燃料になってしまうのかも理解できない。
ただ、普段やっている石鹸作りと似ている!ということが、ますますバイオ燃料作りを身近に感じさせる。
 さて、台所で手作りというが売りのようだけれど、一体どんな道具を使うのだろう。
製造工程の説明文とともに、実際の作業の様子が写真で紹介されている。写真の中でバイオ燃料を作っている女性はニコニコ顔だ。いいな、いいな。楽しそうだな。
肝心の道具はというと、20リットルのオイル缶、電気ドリル、温度計、熱電気のみというシンプルさ。
 作り方は、まずメタノールと苛性ソーダを混ぜてナトリウムメトキサイド(何だろう、これ?)を作る。そして、熱電気で55度に温めた油を、オイル缶を加工して作った密閉容器に移し替え、ナトリウムメトキサイドを少しずつ加えながら、電動ドリルで油をかき混ぜる。その後、一定温度で一定時間撹拌し放置しておくと、液体の下に沈殿物がたまる。それを分離させれば、バイオ燃料の出来上がりなのだ。
 科学薬品を取り扱う作業だし、もちろん注意が必要なのは当然だけれど、作り方だけ聞いてみると、何だか自分にも出来そうな気がしてくる。
 
 このバイオ燃料を代替にできるディーゼルエンジンとやら、生まれたのはほんの100年前らしい。しかも、地元で作れるピーナッツ油を燃料の原材料にしようと考えた開発者はすごい。地域で生産できる植物性油を使用することは、再生可能な上に、燃焼効率も良く、環境への害も少ないというのだ。100年の時を経て、現代を生きる私たちが「過去」から「未来」へのヒントをもらえる、というのはなんとも面白いなあと思う。
 そして、現在、香港から南アフリカまでバイオ燃料で走る車で旅をしながら、食と環境と地域の自立を世界中で考えようと「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」というプロジェクトが活発に活動しているそうだ。「バイオ燃料作り」の講習会も行っているらしい。世の中、すごい人たちもいるものだ。
 
 今すぐ、とは言わなくても、自分たちで「車の燃料を作る」これはぜひともチャレンジしてみたい。誰かディーゼル車に乗っている友人で、一緒に実験してみよう!という心の広い人はいないかな(笑)。
それとも、次回はカナダでディーゼル・エンジンの中古車を手に入れて、燃料を作りながら旅をする!?な〜んてこともありかしら。でも、ただでさえトラブルが多いカナダの中古車・・・。そんなことしてたら、一生かかっても目的地にたどり着けないかもしれない。
やっぱり日本で試そう。賛同者求む。

興味のある方には以下の記事の購読をお勧めします。
引用:『週刊プレイボーイ』   集英社
    04/02/10 No.6(04/01/27発売)  
   「バイオ燃料でディーゼル革命を起こせ」 取材・文 新井由己

参考ウエブサイト:
 「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」 
  http://journeytoforever.org/jp/

 (バイオ燃料の詳しい作り方が出ています)

  新井由己さん「遊民社通信」 
  http://www.yu-min.jp/

                            

↑Top | 文:菊地千恵